※この記事は2015年4月25日(土)公開の記事になります。
先日、2015年4月14日にIMFの世界成長予測が発表されました。
IMFホームページー日本語版―より
個人的にはアメリカの成長予測が減退したことにより、アメリカ株安、ドル安傾向に今後なると思います。
ただし、この表の通りアメリカの持続的な成長は揺るぎませんので、長期的にはドル高、株高であろうとは思います。
また、日本は成長予測が修正されプラスになりましたので、株価は上昇しましたがドル円相場は円高のままです。
たまに評論家が、ドル円相場と株価の相関は薄れたという説明をされている方もいますが、このような説明はあまり信用していません。貿易統計は2年9カ月ぶりに黒字になったということを囃して円高というのも、長い目でみればまた赤字になるのは必至な状況の下、これも得心する内容ではありません。
しかし、IMFの発表は日本の成長が上方修正されていますので株高、円高は合理性があると思います。
また、欧州も成長が上方修正されたのですから株価が上昇してもおかしくないのですが、新値を更新するほどの上昇は観察されませんので、この日本の株価が15年ぶりに新値を更新したのは日本独自の材料ということを考えるべきだと思います。
日経平均と外国人投資家
円高で株高ということは、ドル建てで日経平均をみれば外国人投資家からみれば、日経平均は日本人が思っている以上に外国人は高いと感じているはずです。
ですから、このIMF発表に合理性がありますが、欧州に関してはユーロ高の株安ですから合理性がありません。
こう考えていくと、やはり、今週末の統一地方選挙をにらんで日本政府の株価維持政策が働いていると考えていくのが妥当でしょう。
参考までに記しておきますと、GPIFは日本株だけではなく外国株への投資も含まれていますことをお忘れなく。
しかし、世界の投資家は日本政府が株価維持政策によって人工的に作られた株価に不安を持っているのではありません。
リスク資産の上昇
スイスフランが上昇しています。
伝統的にスイスフランはリスク回避資産として有名です。
他に、リスク回避の資産としては、アメリカドルや、ゴールドなどがあります。
この3つの資産は、有事の○○買い、と表現されることが多いです。
たとえば、昔はアメリカが戦争に関わっていないときには、世界が不安を覚えるので、よく有事のドル買いと言われたものです。
逆にアメリカが関わっているときは有事のスイス買いやゴールド買いと言われます。
要するに何かあった場合は、投資家は自動的にリスク回避資産買いに走るということになります。
今回は、IMFの発表はアメリカの成長減というところからスイス買いを誘発しているわけではなく、アメリカのFRBの金融政策の変更が投資家の不安をあおっているのです。
FRBの金融政策とリーマンショック
今のアメリカの金融政策、イコール、FRBの金融政策はリーマンショックの疲弊した経済を再生させるために実施している金融政策になります。
普通の人の感覚からすれば、リーマンショックなんて何年前の話をしているのですか?
と、思う方も大勢いると思いますが、去年終了したQE3などは完全にリーマンショックとその後発生した、アメリカ債務危機、南欧債務危機、等の後処理の政策です。
金融緩和は不景気のときの基本策
経済が悪いときは、金融緩和をするのが現在の経済学の基本中の基本になります。
日本では、バブル崩壊からずっと金融緩和を行っていましたので、前日銀総裁の白川さんはずっと金融緩和を拒否し続けたのです。
なぜなら、この金融緩和が失敗すると借金しか残らないからです。
しかし、現総裁の黒田さんはバブル崩壊後、世界最大の金融緩和を行ったので「異次元緩和」と呼ばれるのです。
近年の経済学では、中央銀行が金融緩和を行うことが多いのでそれを「量的金融緩和」といいます。
今の先進国はどこも財政が悪いのでやりませんが、昔は政府自身が金融緩和を行っていました。
ですから、金融緩和も二種類あり、政府が行う金融緩和とその国の中央銀行が行う、量的金融緩和があるのです。
黒田さんが評価されるのは日本で初めて「量的金融緩和」を行った点です。
アメリカの金融緩和
アメリカの金融緩和も国家の財政状況が厳しいので、中央銀行、つまりFRBが行っています。
中央銀行が行う、金融政策は古典的な方法は1つしかありません。
それは、金利を上下動することです。
金利を上げ、下げすることによって金融を調整するのです。
しかし、リーマンショック以降、世界の先進国の金利は実質ゼロになったので、中央銀行が行う金融調整は手足を奪われる形になりました。
この伝統的な、金融調整方法を世界のみなさんは勘違いをしてFRBが金利を上げるときが株価の暴落になると考えています。
近年の中央銀行の金融調整には金利の上下動はありますが、最近は量的金融緩和によって、通貨の発行量によって金融調整をしている側面があります。
世界の投資家の勘違い
実は世界の投資家が不安に思うことはFRBが金利を上げることによって、世界の株価が暴落するのではないか?と考えているのです。
過去、FRBが金利を上げるときには必ず株価が暴落をしているからです。
原理原則で考えると、当然のことです。
投資家は、常に年間利回りで儲かるものを探しています。
株をリスク資産と考え、債券や銀行預金の安定利回りを、より求めるので金利を上げれば、株式を利食いし債券や銀行預金に自分の資産を移すから当たり前の話になります。
利食いすれば、当然、株価は下がります。
つまり、その時に備えて、スイスフランやゴールドに買いが集まるのです。
しかし、金利上昇によって株価が暴落をするのは古典的な経済学です。
本当に、それだけでしょうか。
金利上昇と資産移行
伝統的というと、ピンとこない方も多いかもしれません。
もっと、簡単にいえば、古い考え方、クラッシックといえば、ピンと来るかもしれません。
要するに株価暴落のタイミングというのは、昔は金利上昇のときに暴落が来ると考えるのもこれも正解です。
しかし、この量的金融緩和を終了するためには中央銀行が余分に発行した通貨を市場から回収すること、つまり買い取りをした債券を市場に放出するときにも近年の経済学では危機とみられています。
大量に国債を発行している
リーマンショック時に、今、考えると笑い話ですがアメリカが債務不履行、簡単にいえば倒産するのではないか、とまことしやかに語られたものです。
そのくらい、リーマンショック、サブプライムローンの損害は酷いものでした。
その損害は、どこに消えたのであろうと、私も思いますが。
○兆ドルというレベルではなく、○京ドルというレベルですからね。
ですから、アメリカもヨーロッパも日本も空前の国債の大量発行をしたのです。
その国債の買い手になるのが中央銀行です。
金利がゼロなのに、誰が買うのですか、国債を。しかも大量の。
買う人は中央銀行しかいないのが、当たり前です。
中央銀行は大量の国債を抱えたまま
アメリカ経済がいち早く、リーマンショックの傷をいやしたのは報道の通りになります。
日本はリーマンショックの被害をほとんど受けていないのに等しいのですが、バブル崩壊とその後の金融危機を脱していないのが実態になります。
ヨーロッパに至ってはまだ、ギリシャの問題も片付いていません。
ですから、リーマンショックなんて何年前の話だよと思うのが一般の人の話になると思いますし、日本の金融危機などは1990年代の話です。
でも、その後処理が未だに終わっていないのが世界の金融事情になります。
今年前半から、FRBのイエレン議長が金利の上げについて何度も言明しています。
しかし、保有する国債に関しては何も言いません。
アメリカの株価
アメリカの株価は2月に新値を更新してから新値は更新していません。
これは、冒頭に申し上げた、IMFの世界経済成長予測によって高値を更新しないという側面もあります。
しかし、根本的には、FRBの金利上昇がいつになるか?を投資家が見極めているからに他なりません。
イエレン議長は利上げが6月以降になると今年前半発言しましたが先月は、ゆっくりすると言っています。
この発言でアメリカ株は上値をそがれ、IMFの発表によって下向き方向に変わったと言えると思います。
金利上昇は誰しも願うこと
アメリカ政府もFRB、世界の投資家も、みな、金利が早く上がってほしいと思っています。
でも、FRBは利上げの判断を遅らせています。
金利上昇は誰の目にも株価暴落のサインですし、過去の経験則においてもそうなります。
FRBが金利上昇を見送るのは、アメリカ経済がまだまだ力強さを取り戻していないという証左にもなります。
もっとも金利がゼロということ自体が「まともな経済ではない」ということが本当のところです。
金利を上げるということ、ゼロ金利を解除するということは。
まともな経済に復帰するということになります。
つまり、世界経済で一番まともな先進国、アメリカがまだ完全に「まともな」経済に復帰していないというのが現状になります。
ニューヨークダウはリーマンショックの安値から2.8倍になっていますが、まともな経済にアメリカが復帰したらリーマンショックの安値から10倍になってもおかしくない、という推論は成り立ちますよね。
だって、人間の成長でいったら現状のアメリカの株価は、よちよち歩きの赤ちゃんと一緒のレベルなのですから。
これが、大人になったとしたらまだまだ株価は上伸の余地があるのです。
今後の第一関門は金利上昇
それだけ夢のある話になるのですから、世界の投資家は、そのよちよち歩きの段階において投資家は途中の暴落というアクシデントによって株を手放したくはない、というのが共通の認識でしょう。
その関門は世界の投資家は、金利の段階的上昇であるという認識は間違いないです。
ですから、スイスフランが買われているのです。
その危機回避策として。
しかし、本当に怖いのは、中央銀行による市場への国債の放出によって起こる暴落です。
実は、世界中の投資家にこの経験はまだありません。
金利上昇による株価の下落は、既知の下落ですが、中央銀行による市場への国債の放出による暴落は世界の投資家は誰も経験していません。
日本もアメリカ、ヨーロッパも。
株価への夢は語りつくせません。
これだけ、世の中にいっぱいおカネをばらまいたのですから。
しかし、株価上昇は規定路線であるとはいえ、未知の材料への暴落に備え、投資家は備えなければなりません。
著:金融教育アナリスト
記事公開日:2015年4月25日 ここで書かれているものはあくまで個人的見解です。