
離婚の際の親権争い。離婚の手続きを進めるだけでも精神的なダメージは大きいものですが親権争いも同じほどストレスとなります。
さて、親権争いについてデータを見てみると、夫が親権を獲得した割合は全体の2割弱、妻が親権を獲得した割合は全体の8割強となっています。一般的に行って子供と関わる時間が長いのは母親であることが大きな理由と言えるでしょう。共に過ごす時間が長ければ長いほど、絆も強くなるからです。また、子供が小さい場合には母親の世話が必要になるため、子供の健康を考えた結果、母親の方が親権を獲得しやすいとも言えます。
親権をどちらが握るか決まったなら、次に考えなければならないのは親権を持たない側の養育費の支払いです。
支払う側としても受け取る側としても、養育費の相場を知っていなければ交渉を有利に進めることはできません。
ここでは、妻に親権が渡った場合の夫が支払う養育費の相場についてお話しさせていただきます。
養育費には何が含まれるか
養育費とは、子供が親元から自立するまでの間、育てるためにかかる費用のことです。ですから親権者の生活費は含まれません。(相手の意思による突然の離婚によって経済的に困窮する場合には、慰謝料を請求することで補えます。不貞の慰謝料の相場は50万~300万。)
養育費に含まれるのは主に以下のようなものです。
- 子供の衣食住にかかる費用
- 保育園~大学までの教育費・医療費・習い事の費用などです
- その他、子供が社会人として成長するまでに必要になる費用が含まれます
養育費の毎月の支払額
妻に親権が渡った場合に夫が支払う養育費の相場は、夫の年収によって左右します。
夫の年収が500万で妻が無職の場合、養育費の相場は1カ月5万円、夫の年収が600万で同じく妻が無職の場合、養育費の相場は1カ月6万円となります。妻にも収入がある場合には金額はもう少し下がります。
上記はお子さんがお一人の場合です。お子さんがお二人なら金額が倍になるかと言えばそうではなく、二人の場合は8万円が相場です。
実際子育てをするのにそんなに費用がかかっていたかと言えばそうではないかもしれません。しかし、この金額は子供が社会人になるまでの、1カ月の平均的な金額であることを覚えておかなければなりません。
子供を将来大学に行かせたいなら養育費の中から貯金をしておく必要があります。大学進学させるならそれでも足りないでしょう。足りない分は母親の収入で補ったり奨学金制度などを利用することなります。ただ奨学金といっても結局借金ですから、その時に困らない為にも経済観念をしっかり持っておきたいところです。
養育費はいつまでもらえる?
養育費の支払いが行われるのは、原則として子供が社会人として自立するまでです。子供が大学に行くなら大学卒業まで子供が18歳で仕事を始めるなら18歳までというケースが一般的です。養育費の金額と同様、養育費をいつまで支払うかは前もって決めておくべき事項です。支払期間は家庭ごとに異なるでしょう。
また、決めたことは単なる口約束で終わらせるのではなく、法的に効力を持つ公正証書にして残しておきましょう。
養育費放棄の合意
夫婦によっては養育費のやりとりをしないことにするケースもあります。例えば、夫と住むことに耐えられなくなった妻が養育費なんていらないから即刻離婚して欲しいと訴える場合です。もちろん夫と妻が逆のパターンもあります。この場合、「養育費放棄」の合意をしたということになります。養育費放棄の合意をしたなら、後々うやむやにならないように離婚協議書を作成してしっかり証拠を記録しておきましょう。
実際、離婚する夫婦のうち6割が養育費の請求・支払いをしないという決定を下しています。
その理由として後々揉めたくない、もう関わり合いを持ちたくない、どうせ養育費を決めてもきちんと履行してくれない…という理由が多いようです。では、養育費放棄の合意を交わしたにも関わらず、子供を育てている側の親が病気になり経済的に困難な状況になってしまった場合どうなるのでしょうか?離婚の手続きが済んでいる場合でも、子供が未成年である限り子供を扶養する責任は両親に存在しています。
これを「生活保持義務」といいます。
ですから、過去に「養育費放棄」の合意をしている場合でも、後になって支払う責任が発生する可能性はあるのです。
養育費放棄の合意の撤回
あなたが母親で子供を育てている側であったとして以前離婚した際に元夫と「養育費放棄」の合意を交わしたとします。しかし最近になって体調を崩してしまい経済的な壁に直面していたとします。子供を養育する費用が足りず困ってしまったなら養育費放棄の合意の撤回を考えるでしょう。
ここではその養育費放棄の合意の撤回の手順についてお話します。
まずは元夫と連絡を取り、事情を説明し養育費の支払いをしてもらえないかお願いしてみましょう。
それでもダメなら家庭裁判所にて調停を申し立てることになります。調停の申し立て手続きや費用にについては下記をご参照下さい。
調停の手続きや費用について
家庭裁判所での調停では、調停委員を交えて話し合いが行われます。とはいっても、調停なら離婚した相手とはまったく顔を合わせることなく話し合いができるので、もう二度と顔を合わせたくないと思っている場合でも活用すると何かしらのプラスには働くかと思います。調停で養育費の支払いに相手が合意しない場合は家庭裁判へと移行します。しかし裁判となると弁護士を雇うのが一般的ですから、弁護士費用のことを考えると経済的な問題はますます大きくなってしまう可能性があるのが難点です。
養育費放棄の合意の撤回は、できるだけ話し合いのみで済ませたいものです。
養育費の請求
今度はちょっと視点を変えて、あなたが元夫の立場であるとしましょう。妻の意思で突然離婚され、養育費は支払わなくていいと言われたとし、そのことも書面に残されています。
ところが突然元妻から連絡があり、体調を崩して仕事ができなくなってしまった、子供の養育費を支払って欲しいと言われた場合、元妻や子供の養育費については、すでに処理が済んだ過去のことだと思っていたのに突然請求されたら困りますよね。ましてや新しい家庭をすでに持っていたら余計に困ります。
この場合、争点は元妻が本当に体調を崩しているのかということになります。あなたが支払うことに合意するのであれば問題はありませんが、もしも合意できないなら断って下さい。しかし断った結果、調停を申し立てられた場合は出頭義務は発生します。
調停委員を介して元妻と話し合い、元妻が本当に体調を崩して働けないことが明確となれば子供が未成年である以上、やはりあなたには養育費を支払う義務が出てきます。
しかし、いくら支払うかはあなたの収入によって考慮されます。無理のない範囲で支払いを申し出ましょう。ここからも分かるように親の義務や責任というものは非常に重く、離婚をしたから関係ない。親権は相手方にあるから無関係…。完全にそういうわけにはいかないのです。