毎日同じ日の繰り返し、うつ病になって最初の頃は本当にお薬を飲んで、ずーと寝ているだけの日々でした。ここではうつ病と運動療法について、また運動することの効果や運動と脳との働きについてお話させていただきます。
適度な運動は体に良い効果をもたらす
まず大前提として適度な運動は体に良い効果をもたらすか否かと問われれば、ほとんどの方は良い効果をもたらすと回答されるはずです。その適度というのは性別や体質、体格によっても異なりますし、うつ病に照らし合わせれば、更に適切な運動量というのは個人差があると思います。
私自身の経験から言うと、うつ病で本当に辛い時は当然、運動どころか、ほとんど部屋から出ませんでした。また抗鬱薬の『レメロン』を服用していた影響もあって太りました。レメロンの副作用は太るからです。
運動すべきかどうかの議論は無意味
運動はした方が良いに決まってますが重要なのは下記二点です。
まずは適切な運動量です。これはネットでこれくらいが適切だとかいうものを参考にするのではなく、ご自分が心地よいと感じるかどうか、あるいは、ほんの僅かだけ無理をする程度で良いと思います。
そして次に運動を始めるタイミングです。うつ病を患っているといっても初期の苦しい段階なのか?回復期なのかで適切な運動量は変わってくるでしょうし、うつ病になる方は真面目な方が多く、規則、秩序などを守るべきといったお考えを持っている方も多いようなので、無理にこれが正解、これは不正解と白か黒かをハッキリさせるような考え方はお控えになられた方が良いと思います。
運動量を少し間違えただけで人の生死に関わるなら、人類はもう滅びているでしょうからね。
運動量の無理は無理を生むだけ
運動療法というワードで検索をして、○○の運動を週に何回すると効果的です。と書かれていても無理に回数や運動量を合わせてやる必要はないと私個人は考えています。
要するに運動して心地よいかどうかが重要で、無理矢理な義務感や運動しなければうつ病は治らないとの誤った思い込みからくる『運動した感』を出す為に動く必要はないと思います。
どんなに効果的なものであっても、それができる人できない人がいますし、向き不向き、得手不得手は誰しもあります。運動が嫌いなら嫌いで、それは仕方ありません。
ただいきなり何の興味も工夫もなしに無理!と決めつけるのではなく、とりあえずは工夫してみることは大切かなと思います。
例えば運動という言葉が拒否反応を起こす方はいらっしゃるでしょうから『ウォーキングする』『散歩する』という表現で解釈してみる、あるいはうつ病の改善という目的以外の何らかの目的を見つけてみても良いでしょう。
○○を買いにコンビニまで歩く、○○からの景色はキレイだからそれを見に行くだとか。
万歩計で達成感を味わう
それ以外に万歩計を買ったり、歩数を数値化することで達成感を味わえるでしょうし、外に出ることができる状態でないなら、家の中で歩いて目標とする歩数を歩いてみるのも良いでしょう。
逆効果はあり得るのか?
運動をすることは体にとって良いことなのは周知の事実ですが、当然その量や頻度を誤ると逆効果になるのは言うまでもありません。
アナボリックとカタボリック
皆さんはアナボリック、カタボリックという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか?アナボリック(同化)とは筋肉や脂肪など体の組織が新しく合成されることを言い、逆に体の組織が分解され、壊されることをカタボリック(異化)と言います。
少しわかりにくいかもしれませんので補足しますと、仮に腕の筋トレを行ったとします。そうすると体は腕の筋肉をアップさせようと体内にあるたんぱく質を栄養源にして腕に肉をつけようとするわけですね。
それで筋肉量がアップするわけですが、ほとんど食事も摂らないで筋トレをしても、その肉付けをアップさせる為のたんぱく質が足りないので、筋トレが逆効果になり、どんどん筋肉がやせ細っていくわけです。
これがカタボリック(異化)です。つまり摂取カロリーよりも消費カロリーが上回ってエネルギー不足になることを言うのです。
ですから、うつ病には運動が良いとう情報を見聞きしたからといって、しっかりした食事を摂った上での運動であれば良いですが、ほとんど食事も摂らず、運動だけをしても、体を鍛えているというよりも体を虐めているだけで逆効果になりかねません。
もちろん運動の強度によっても摂取すべき栄養素の量も異なってくるので、少しウォーキングする程度の運動であれば、特別カタボリックを心配する必要はありませんが、筋トレなど無酸素運動をする場合は気を付けたいところです。
セロトニンの減少
うつ病になる原因の一つとして考えられているのがセロトニンの減少です。セロトニンの生成量が減るなどしてセロトニン神経機能が低下すると、不安や抑うつが強くなり、イライラしやすくなったりストレス耐性が弱くなることは一般的に知られています。
また女性の場合は、女性ホルモンがセロトニン神経系の活性に影響を及ぼす為、更年期以降に女性ホルモンの減少が原因で不安や抑うつ傾向になりやすいと言われています。またセロトニンは加齢により少しずつ生成量が減少していくのでストレスの影響を受けやすくなってきます。
実は脳より腸にたくさんあるセロトニン
セロトニンというと脳内にある物質といったイメージを持たれている方が多いと思いますが、実は腸に約90%、血液中に約5%、脳に約5%あるといわれています。
ではこのセロトニンはどうやって生成されているかと言うと体内にアミノ酸の一種であるトリプトファンという栄養素を取り入れることで合成されるようになっており、トリプトファンが腸から取り込まれた後に血液を循環し、腸や脳などトリプトファン水酸化酵素という酵素をもった細胞によってセロトニンが合成されます。
ですからセロトニンを増やすためにはトリプトファンが含まれている食事を心掛けることが大切なのです。
トリプトファンと食べ物
トリプトファンが多く含まれている食べ物としては以下があります。
- 納豆
- 豆腐
- 味噌
- 醤油
- チーズ
- ヨーグルト
- バナナ
- 肉
- ナッツ類
なかなか食事からトリプトファンが摂取できないからトリプトファンのサプリで摂取しようとお考えになっている方、絶対に止めた方が良いです。
なぜならトリプトファンの過剰摂取は極めて危険だからです。
一般的にトリプトファンは1日500mg程度摂ると、睡眠対策に有効といわれていますが、仮にサプリから300ml程度摂取をしたとしても食事からどの程度トリプトファンが摂取できているか分かりませんし、抗うつ薬との相性や作用による弊害が出る可能性もゼロではありません。
トリプトファンは普通に三食摂取していれば500mg程度は摂取できるようですので、無理に早く治したいからトリプトファンを大量に摂取しようなどとは絶対に思わないでください。
セロトニンを増やすには運動が効果的?
話が逸れましたがセロトニンと運動との関係性ですが、まず太陽光を浴びるとセロトニンが増えると言われています。太陽光を浴びるといっても夏の暑さきびしい時に直射日光を浴びなければいけないわけではなく、部屋の中でもカーテンを開けて太陽の光を部屋に取り込むだけでも効果があると言われています。
ただあまり日差しの強い時期ではないなら外に出て自然に触れて、ウォーキングすることでセロトニンを増やす効果と筋力維持やアップ、発汗などによるダイエットなど一石二鳥になると思います。
また同じ動きを繰り返し行うリズム運動も脳のセロトニン神経を刺激すると言われているので、一定のスピードで歩くウォーキングはやはり有効な運動です。その他のリズム運動としては「ジョギング」「腹式呼吸」「踏み台昇降」「サイクリング」「水泳・水中歩行」「社交ダンス・フラダンス」などがあります。
ドーパミンと運動との関係性
ドーパミンという物質をご存知でしょうか?ドーパミンは神経伝達物質のことを指し、アドレナリン・ノルアドレナリンの前駆物質になります。このドーパミンがしっかり分泌されることで快感や幸福感が増したり、意欲増進したりする脳内ホルモンの一つです。
このドーパミンとうつ病との関係ですが、やはりうつ病は快感や幸福感を感じたり、意欲増進の真逆にいる状態ですので、運動によってドーパミンを増やすことは極めて重要な作業です。
上記の書籍は私が実際に購入したものですが、その中からドーパミンに関する記述を引用させていただきます。
運動ドーパミン、意欲と運動システムの要となる神経伝達物質の自然減少を予防する。体を動かすとドーパミン、ニューロン同士のつながりが強められ、自然とやる気が増す。
引用元:脳を鍛えるには運動しかない!P.296
神経変性疾患を予防する最良の方法は、強い脳を作ることだ。有酸素運動は脳を強くする。
引用元:脳を鍛えるには運動しかない!P.297
こちらの書籍では筋トレをこれくらい行った方が良い、ウォーキングやジョギングはこれくらい行った方が良いといった記述がありますが、前述しましたように、人によって体調、体質、体格も違い、もっと言えばお住いの地域によっても気温差、気圧差があったり、年齢も違うなど、この手の推奨運動量ってあまり意味がないと個人的に思っているので掲載は見送らせていただきます。
ちなみに私はうつ病から抜け出せましたが、精神科に入院していた時は毎日ベッドでゴロゴロ寝ていただけ。そして退院後も特に運動はしませんでした。しっかりうつ病から抜け出せたかなというタイミングで運動を始めても十分だということを付け加えておきます。
では皆様の一日でも早いご回復を願っております!